狩猟犬サツマビーグルのマリーちゃん訓練記 第3話(完)
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狩猟犬サツマビーグルのマリーちゃん訓練記 第3話(完)


マリー号は早くも単犬にてシカを起し追跡する!。。。

今日、本格的な山入訓練を開始し11日目となるが、単犬にてシカを起しで追跡し、美しく大きな声で追い鳴きをしながら、約15分間追跡し私の前方に4頭の雌シカを見事に追って来た。その後も20分余り追跡し私の元に帰って来た。初めての追跡でこれだけ長く見事な追跡を見せた犬は過去45年間の猟歴で初めてである。
マリー号は、生後6ヶ月代でこの快挙をいとも簡単にやってのけた。

以下、マリー号の今日までの訓練経緯を紹介する。
●平成28年10月18日生・・・(兄妹5頭) 父:ハク号×母:マレ号
●生後60日・・・兄妹との別れ(北海道:牡、秋田:牝、栃木:牝、岡山:牡、徳島:牝)
※ 頭骨が大きく四肢がとにかく太いガッチリした体躯。アサ号に続く大型の可能性が大と見て自家用に残す。
●生後100日・・・8種ワクチンと狂犬病ワクチンを接種。
●生後110日・・・基礎訓練開始=約60日で合格
基礎訓練は本格的な山入りに向けた訓練で、非常に重要な訓練である。
内容は順次、次の通りである。
①車に慣れる・・・酷い車酔い=不合格。約30日をかけて車酔いを克服。
※ 車酔い克服についての詳細は「狩猟犬サツマビーグルのマリーちゃん訓練記 第1報」に記載。
②林道での散歩・・・初日は恐怖心から自由に走ることはできなかったが、2日目からは自由に走り回れる=合格。
③杉山を平行歩き・・・3日目から杉林に入れ、平行移動やゆるやかな斜面移動をするが問題なく付いてこれる=合格。
④水が流れる谷渡り・・・初日は水が無い谷の上下移動=合格。2日目は水がある谷の横断移動=最初は恐ろしくて出来なかったが自分の勇気で渡るまで約60分程知らん顔して待ってやったり、時折隠れて焦らせたりしながら辛抱強く待ってやると「ザブン」と水に飛び込み横断できる。逆戻りはなんなく横断できる=合格。
⑤急な斜面の上り下り・・・上りは出来るが下りが出来ない=不合格。約7日間をかけて克服。(この下りが一番難しい・・・訓練者も四つんばいになり下を見れば怖さが理解できる)
⑥主人から約100m程離れて捜索行動ができる=不合格。山が怖くなくなり何物にも興味を抱き、主人から段々と離れて行動できるようになるのに約7日間をかけて克服。
●生後180日・・・呼び戻し訓練  
①先導犬に付けて山入りし、途中逸れても元の場所に独力で帰れる=不合格。約3頭の先導犬に付けて約7日間をかけて克服し合格。非常に早い習得能力で驚いている。
※ 先導犬は知力・体力も優れているのでシカを起して追跡に移ると、訓練犬は途中で必ず逸れる。この訓練の機会(遠くに置いてけぼりにする)を作るために先導犬を上手く使うことが秘訣。この時点では訓練者の後にはどこまでも付いてくるのでこの手法を考案。
※ 逸れて暫くすると主人を探すが出来ないとなると「ウォ~ン」と寂しい声で鳴き、ほっておくとまた帰る道を探しだす(GPS受信機で確認するとその様子が良く分かる)
※ この訓練が一番難しい・・・とにかく「待ってやる」こと。60分かかろうと訓練犬が山に入って行った箇所で待ってやることである。決して迎えに行ってはならない。あくまでも訓練犬の自力解決を待つもみである。
※ 帰ってくると笑顔で腰を落としてオーバーに「ヨシヨシ」と褒めてやる。
②日増しに体力も付いてくるので逸れる場所も遠くなり、1kmになることも有る。300mくらいまで帰って来るのを待って、GPS受信機で確認し移動が進展しない場合のみタイミングを見計らい、笛(20番スラッグ弾空ケース)で『ピッピー、ピッピー・・・」と吹いて呼び戻しを行う。帰ってくるまで吹いてやり訓練者が吹いていることを学習させる。
※ この呼び戻しの笛が鳴っている場所に訓練者が必ず居ることを教える。この笛の呼び戻し訓練は、将来完成犬になっても笛が鳴れば必ず帰るようになる。

以上が、本格的な山入り訓練前の基礎訓練となる。この訓練は出来るまで行うこと。
訓練の秘訣は「急がず、焦らず、騒がず」をモットーに、訓練犬を信じ、訓練犬の気持ちになって考え行動することが完成犬への第一義と考える。人犬一体となり大汗をかくことである。

●生後190日・・・山入り訓練開始
この訓練は、最終段階となり、単犬で捜索、起し、追跡、獲物確認、帰り(呼び戻し)が確実に出来ることである。
この訓練は、何時もの林道では無く、獣道(シカの通い道)を探し、訓練犬と共に辿って行くか、若しくは透けた雑木林や竹林を搔き分け訓練犬と一緒になってシカの起こしを行う。
※ しかし、あくまで訓練犬の自主性に任せ、訓練犬の行動をよく観察すること。訓練犬は基礎訓練で訓練者から100mほど離れて捜索できるまで成長しているので、じっくりと待ってやる。そして訓練犬が戻ってくると目線を合わせず知らぬ顔をして、約45度の角度で斜面をゆっくりと登って行く。この角度は非常に大切なことで、直線的に登って行くと、吹き下ろしと吹き上げの獣臭をキャッチする確率が悪くなる。それは、サツマビーグルは高鼻をよく使い上手に獲物を起す特性がある。即ち斜めに上り下りすればその獣臭をキャッチできる確率が高くなり、起こしのスピードアップが図れると言うメリットがある。
この訓練は、人犬一体となって、起こしが出来るまで行う。非常にキツイ訓練となる。

【訓練に必要な用具】
携帯電話、水筒(お茶)、虫よけスプレー、タオル、ティシュ、荷物用テープ(洋服についたダニの除去用)、GPSドックマーカー及び受信機、鉈、綱など

<訓練総評>
マリー号は、基礎訓練当初は「車に慣れる」でつまづいたが、その後は全行程を短期間で意図も簡単にやってのけた。マリー号は、利口で賢く、学習能力がずば抜けて優れている。本格的な訓練開始から僅か10日余りで、シカを自力で起こし約30分余り追い鳴きし、私の前に牝シカ4頭を追って来た。狩猟期間中であれば捕獲と言うことになる。
捜索はエネルギッシュに広範囲に狩り込んで行き、時折止まって高鼻で獣臭をキャッチすると言う成犬並の猟芸を見せる。追い鳴きは「ウォウォ」と大きな連続鳴きで、高速追跡が出来る。身体は小柄だが、全身筋肉質でバネがあるので、大型犬並みの追跡ができる。
今後どの様な猟犬に成長するのか楽しみである他、立派な台牝として優れた後継犬を残してほしいと考えている。

この訓練日記は、生後10ヶ月位までは続くと当初考えていたが、今回を持って終了(完)としたい。

訓練犬の第一声をアメリカンビーグルの大御所であった埼玉県の故鈴木修三氏の言葉を借りて表現すれば『一声千両』の価値がある。これを体感できる者は人犬一体となって大汗をかいた者だけに与えられる・・・私はこの言葉が大好きである。

以下、本日のマリー号のシカ猟犬への第一歩である第一声「起こし」を紹介する。

6時30分に訓練場所に到着。GPSマーカーを付けて放犬。本日の山は、先輩犬が訓練している場所でのシカは非常に警戒心が高く、訓練犬には荷が重いと判断し、少し離れた暫く来ていない場所を選んだ。
しかし、山道を辿って行くとイノシシのヌタ場がありそれも昨夜使用している。やられはしないかと思案たが、マリー号はやる気十分でどんどん山道の両サイドをエネルギッシュに狩り込んで行くのを見て、運を天に任せこの山で訓練することにした。

写真① イノシシのヌタ場に興味津々なマリー号





































写真② 捜索中に時折止まり高鼻を使い獣臭をチェックするマリー号
この後、物凄いスピードで林の中に消えていくと「ウォウォ」と言う追い鳴きに変わった。
「一声千両」の言葉を起い出し、今までの努力と苦労が身体からスーと消えて行った。本当に涙が出る思いだ!!!。。。この瞬間が何時になってもたまらない・・・これが有るから訓練は止められない(笑)。





































写真③ 起こしから追跡に移りシカを確認するまでのマリー号の軌跡
▲印が私のいる位置(シカを起こした場所)で犬のマークがマリ―号。旗のマークは以前シカを捕獲した場所(射場として利用している)
シカは、▲点で起き、その後青い線の軌道にて逃げ、一回りして寝屋に戻る・・・と言うシカ特有の逃げ方をしている。起こしから約15分である。狩猟期間中で有れば捕獲と言うことになる。サツマビーグルのシカ猟は通常このパターンが多い。それにしても初めての起こしでこの追跡は恐れ入った!。シカにとっては末恐ろしいマリー号と言える。




































写真④ 牝シカ4頭を確認した後も大声で追跡して行くマリー号
マリー号は、シカ確認後も20分余り追跡し、私の元(▲地点)に確実に帰って来た。
捜索、起し、追い鳴き、追跡、獲物確認、帰り(戻り)・・・全て満点である。




































少し早い感はするが、シカ猟に関する訓練当初の目的は達成できた。
マりー号のシカ猟犬としてデビューである。マリー号よ!おめでとう・・・。。。
今後は、山入りの回数を積み重ねて行く度にシカ猟犬としての完成度は増して行くだろう!!!。

マリー号は、とにかく学習能力がすば抜けている。今までこの様な犬は、アメリカンビーグルの経験も含め(約45年)見たことが無い。。。二世の誕生が楽しみである・・・。

マリー号は、体高38cm、体重14kgと言う小型で、恐らくもう大きくはならないと思う。もし小型サツマビーグルの誕生となれば言うことはない。

全国に行っている兄妹犬の活躍を期待して本稿の結びとする。





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